親と子をつなぐもの=狩猟、そして罠づくり
- イノホイ会員さま
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前田 晃一さん
(イノホイ歴:3年)
当社では鳥獣被害対策用品を販売しておりますが、狩猟に関する情報が集めにくいという声も多く寄せられております。
そこで私たちは、実際のお客様のリアルな声を発信することで、初心者から上級者まで、狩猟に関わるすべての人に、なにかの気づきや安心感を提供したいと考えました。
今回取材させていただいたのは、鹿児島県霧島市にお住まいの前田 晃一(まえだこういち)さんです。(以下:晃一さん)
イノホイ歴は3年。
狩猟をされるお父様(以下:前田さん)の代わりに晃一さんがイノホイで商品をご購入いただいているとのことで、今回は親子で一緒に取材させていただきました。
仲睦まじいお二人に、狩猟や罠に対する思いなどを中心にお話を伺いました。
小さい頃から虫や魚を”捕る”ことが好きでした
自宅の倉庫
前田さんと狩猟について
前田さんが狩猟免許を取得したのは昨年のこと。まだ新米の猟師です。
幼少期から虫や魚を捕ることが好きで、そこから獲物がどんどん大きくなり、ついに狩猟業界に踏み入れました。
3年ほど前からイノホイをご利用いただいていますが、狩猟をするにあたっての準備期間だったそうです。
自宅から車で10分ほどのところに自分の山を持っており、歩いても行ける距離にあります。現在はその山に罠を1km四方にかけています。
猟友会にも所属しており、今の時期は野生動物の有害駆除をしています。
この近辺は、シカやアナグマが多く、捕獲数の約6~7割がシカだそうです。
肩甲骨からお尻までが70cm~90cmほどの比較的大きいシカばかりです。
またアナグマの形跡を感じられる足跡が畑にありますが、イノシシやシカを主に捕獲するため、アームを大きくしてアナグマが罠にかからないように調整をしています。
罠について
イノホイを知ったのはインターネットで調べたことからで、別の狩猟用品店で商品を買ってみたものの、自分に合ったものになかなか出会えずじまいでした。
そこでセミナーなども実施しており、”家の近くで安いところ”でヒットしたイノホイで買ってみた、というのがイノホイとの出会いでした。
くくり罠の完成品セットを最初に購入することでスターターセットとして活用しています。
今では踏み板だけなど、必要なものを単品で取り繕うことが多く、塩ビ管などについては、近くのホームセンターなどで手配したものを使うこともあります。
自作の罠
また以前に、かしめが抜けてしまったことがあり、現在は自分でかしめ機を購入して3カ所でかしめるようにしています。
「かしめ機を購入して、2回かしめのものは3回かしめにしています。「くくり罠 ストロング」の台座は重いため、自作でプラスチックに変えたりと自分たちなりに工夫しています。」
台座の部分を自分で工作した「くくり罠 ストロング」
イノホイでも、3回かしめで800kgほどの耐久性が保てるように改良を重ねたものが現在販売している商品「くくり罠 ストロング」です。
また、くくり罠のアームのサイズ感に関しても難しいと感じています。
範囲を広げるためサイズを大きくしようと思っても、端っこを踏まれたりして空はじきすることが多くなり、逆に小さくても踏ませる難しさを感じたりと、他のくくり罠ユーザーと同じ悩みを前田さんも抱えています。
「前足が罠にかかれば大丈夫ですが、後ろ足は特に勢いが強いので抜けられてしまいます。」
他の狩猟用品店の商品を使い分け、一度購入してみて自分に合うものなのかどうかを判断しています。
また前田さんの住む地域では、自治体からも猟友会宛てにワイヤーが支給されることもあるそうです。
自宅の倉庫はまるで罠製作所
自宅の倉庫内にある作業場
山に設置している箱罠は自分たちで溶接して作ったものですが、材料代が多くかかるのが難点となっています。
その他にもバネ、ワイヤーなどを使って部品セットを自作している前田さん親子。
最初は、6×19のワイヤーを使っていましたが、イノシシに逃げられてしまったこともあり、現在では知り合いにおすすめされた6×24のワイヤーを使っています。
猟友会について
前田さんが所属しているのは、横川町猟友会です。
約3,300人の町で、現在は25人ほどの猟師が所属しており、20代前半の若手もいれば女性もいます。
この地域の報奨金はシカ、イノシシ共に1万5千円で、他の地域に比べて金額も高く、やりがいを感じています。
前田さんがかけている罠の数は30個ほどで、見回りもやっとのことでしていますが、4月から有害駆除を始めて、3カ月余りで13頭。
初めてとは思えない順調な滑り出しです。
内訳としては5月までで10頭、6月は0頭、7月の1週間だけでも3頭となっており、昨年の6月はたくさん見かけましたが、今年は雨のせいか、6月の捕獲頭数は0頭だったそうです。
「猟師の先輩から、満月のときがイノシシを捕りやすいということを聞いたことがあります。月明りがあることでイノシシが目で見て歩き、匂いをあまり警戒しなくなるのだと思います。」
イノシシとシカをおびき寄せる「コールタール」
イノシシ捕獲に有効なのは月明りだけではありません。
匂いの強いものに寄ってくるイノシシの習性を利用した「コールタール(油)」を染み込ませた布を枝に巻きつけると効果的だそうで、イノシシだけでなくシカも寄ってくるそうです。
ユンボで作業をした後などにもイノシシが掘った穴が見られたため、「コールタール」はイノシシやシカをおびき寄せるのに非常に良いと前田さんはいいます。
止めさし、処理について
イノシシやシカの止めさしは猟友会に依頼をしており、箱罠内のイノシシを鉄砲で仕留めるのは難しく、電気止めさしで行っています。
前田さんの周りでは、電気止めさしを自作して使っている人も多いそうです。
また、前田さんたちが住む地域の近辺では処理施設がないことと、イノシシやシカの悲鳴が頭に残って心が痛みなかなか自分では処理ができないことから、猟友会の仲間などで個人でさばいてくれる人にお願いをしています。
くくり罠について
くくり罠は止め防止が付いており安心して使えるので、使い心地は良いと前田さん。
「使い勝手はいいのですが、部品がイノシシやシカと一緒に外れて無くなるため、自分で紐で結んだりしてアームが踏み板から離れないようにしています。」
他のイノホイユーザーからもお声をいただいている、アーム紛失問題に前田さんも工夫して対策をしています。
また「くくり罠の台座は高さ調節が重要」と語る前田さん。 岩場などでは台座が薄くないとうまく設置できなかったり、女性で設置用の穴を掘ることが大変な方にも薄い台座の方が設置しやすいなど、適切な高さも条件によってさまざまです。
そこでイノホイでは、台座の高さをカスタマイズできる台座カットもご用意しています。
また、「くくり罠 スプリングセット」では、女性でも引ける通常のバネと強いバネのものなど購入時に荷重を選ぶことができます。
「バネが強すぎて引くことができないとなると、罠にかかった後の止めさしはもっとできないはずなので、ある程度の力がある人でないと狩猟は難しいと思います。そういうところでも狩猟業界に対しての課題を感じています。」
前田さんはまだ狩猟を始めたばかりということもあり、幸いなことに危機を感じた話はまだありませんが、知り合いで罠から外れたイノシシが向かってきて転んで腰を痛めた人もいるようです。
前田さん親子の思い
晃一さんは広島・山口の自動車工場で15年ほど勤めて4年前に生まれ故郷のこの町に戻ってきました。 現在は個人事業主として、請負で山や民家の草刈りなどを行っています。
晃一さん:
「猪肉やシカ肉のおいしい部分を食べられたり、周りには米を作っている人もいたりと、田舎ならではのこういう生活もいいですよ。」
かわって前田さんの日課であり趣味にもなっているのが散歩です。 罠の状態を見ながら散歩をし、罠にかかっていることを見つけたら、晃一さんへ連絡をして車で来てもらい捕獲をしています。
前田さん:
「狩猟も罠づくりも好きな気持ちがあるから続けられます。」
狩猟は二人の共通の話題、そして楽しみの一つとしてこれからも”父と子”二人の絆をつないでいきます。