狩猟は、個人が趣味として楽しむものだけではなく、野生鳥獣や外来生物による被害を防いだり、生態系のバランスを保つ役割もあります。
本記事では、狩猟でお金を稼ぎたいと考えている人に向けて、狩猟で得られる収入について詳しく解説していきます。狩猟に必要な道具や資格についてもお伝えするので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
狩猟とは?意義や役割を知ろう
狩猟とは、鳥獣保護管理法で定められた罠や空気銃などの狩具を使って、狩猟対象の鳥獣を捕獲することです。狩猟は誰でもできるものではなく、狩猟免許取得や狩猟者登録が必要です。
狩猟には、趣味としての楽しみだけでなく、害獣や外来種による被害を防ぐといった役割もあります。ここでは、狩猟の意義や役割について詳しく解説していきます。
農林水産被害を防ぐ
農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況(令和4年度)」によると、野生鳥獣による農作物被害額は約156億円であり、特に農山村地域ではこの問題が深刻です。
これらの地域では、野生鳥獣の捕獲や被害防除設備の設置に多額の費用が必要となる一方で、都会ほどの財源がないため、十分な対策を講じられない場合が多くあります。
このような状況で注目されるのが狩猟の役割です。狩猟は、野生鳥獣を捕獲することで農作物や森林を守り、被害防除設備を導入する余裕のない農林水産業者を助ける役割も担っています。
外来生物による被害を防ぐ
外来生物とは、「海外から我が国に導入されることによりその本来の生息地又は生育地の外に存することとなる生物」と外来生物法で定義されています。
日本にやってきた一部の外来生物は、生態系や人の生命・体、さらには農林水産業へ大きな被害を与えることがあります。このような外来生物は「特定外来生物」に指定されています。
狩猟鳥獣で特定外来生物に指定されているのは、アライグマ、アメリカミンク、ヌートリア、タイワンリス(クリハラリス)です。狩猟による特定外来生物の排除は、農林水産業被害の軽減や日本の自然生態系の保全に大きく貢献しています。
参照:https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list.html
生態系のバランスを保っている
狩猟は、生態系のバランスを保つ役割を担っています。特定の鳥獣が増えすぎると、他の動植物の生活環境が脅かされ、生態系全体のバランスが崩れることがあります。
例えば、シカやイノシシの個体数が増加すると、植物の食害が進み森林の再生が妨げられることがあります。狩猟は、増えすぎた特定の野生鳥獣を捕獲することで、個体数を調整し生態系のバランスを保っています。
狩猟鳥獣は46種類存在する
日本に生息する約700種の鳥獣の中から、狩猟対象としての価値、農林水産業などへの被害の程度、そして狩猟が鳥獣の生息状況に与える影響を総合的に考慮し、鳥獣保護管理法施行規則に基づいて46種類が選定されています。
狩猟鳥獣は、都道府県によって捕獲が禁止されている場合や、捕獲数に制限が設けられていることがあります。狩猟を行う際は、登録した都道府県の規則を事前に確認しましょう。狩猟できる鳥獣については下記の記事で詳しく紹介しております。合わせてご覧ください。
>狩猟できる鳥獣の種類は決まっている!ルールを守って楽しもう
狩猟で得られる主な収入源
狩猟は、捕獲した野生鳥獣から得られるジビエ肉の販売や、有害鳥獣の駆除による報奨金などで収入を得られます。ここでは、狩猟が生み出す収入源の種類や、それぞれの特徴について詳しく紹介します。
報奨金対象の害獣を駆除する
狩猟には、狩猟免許を取得し、都道府県に狩猟者登録を行って行う「登録狩猟」と、有害鳥獣の捕獲など特別な目的で許可を受けて行う「許可捕獲」があります。
許可捕獲は、主に農林水産業への甚大な被害を軽減するために行われ、鳥獣の生息数を調整する重要な役割を担っています。この活動は各自治体の被害防止計画に基づいて行われ、地域社会への貢献として報奨金が発生する場合があります。
報奨金は、有害鳥獣(農作物や家畜、人家などに被害を与える鳥獣)の駆除に対して支払われます。報奨金制度は自治体によって交付条件や金額が異なりますが、害獣ごとの平均的な金額は以下の通りです。
なお、報奨金を受け取るためには、捕獲の証明書類(耳・尻尾の提出、写真、捕獲活動書など)の提出が必要です。
鳥獣の肉や皮を販売する
狩猟の収入源には、捕獲した野生動物の肉、いわゆるジビエの販売があります。ジビエは高級食材として需要が高まっており、鹿や猪は1頭につき約2,000円〜20,000円前後で買取してもらえます。
注意点として、仕留めた獲物をジビエとして一般流通させるには適切な衛生管理が求められるため、捕獲した獲物は解体所(食肉処理施設)で処理してもらう必要があります。解体所に依頼する場合、搬入にはいくつかの条件が設けられている場合が多いため、事前に確認しましょう。
また、鳥獣の角や皮はフリマアプリやネットオークションで取引されています。鹿の角は1本につき約1,000円〜5,000円、皮は1枚約3,000円〜20,000円で売れるケースがあります。
狩猟の始め方
狩猟は自然との触れ合いや食材の確保、そして生態系保全に貢献できる魅力的な活動です。しかし、狩猟を始めるには、法律で定められた狩猟免許の取得や猟具の準備、狩猟者登録など様々な手続きが必要です。
ここでは、狩猟の始め方について初心者の方にも分かるように詳しく解説していきます。
狩猟免許試験に申込みをする
狩猟免許は、狩猟方法に応じて「第一種猟銃免許(散弾銃・ライフル銃)」「第二種猟銃免許(空気銃)」「網猟免許」「わな猟免許」の4種類に分けられています。
狩猟免許試験は、各都道府県で複数回実施されます。希望する免許の種類を確認し、お住いの地域の担当部署に問い合わせ・申請を行いましょう。
初心者狩猟免許講習会に参加する
初心者狩猟免許講習会は、狩猟免許取得を目指す人を対象に各都道府県の猟友会が主催する講習会です。この講習会では、狩猟に必要な法令や鳥獣判別の知識を座学で学ぶほか、銃器やわな、網など猟具の取り扱い方法を実技を通じて習得できます。
試験で出題される法令などはマニュアルで対応可能ですが、猟具の取り扱いを個人で学ぶのは難しいため、専門家から直接指導を受けられる初心者狩猟免許講習会に参加することをおすすめします。
狩猟免許を取得する
猟師になるには、国家資格である狩猟免許が必要です。先述したように、狩猟免許は4種類に分けられています。ただし、免許を取得しただけでは狩猟を行うことはできません。
狩猟免許試験は各都道府県で毎年複数回実施され、「知識試験」「適性試験」「技能試験」の3種類が課されます。さらに、銃猟を行う場合は銃砲刀剣類所持等取締法に基づく銃の所持許可が必要です。この許可については、事前に最寄りの警察署で詳細を確認しましょう。
銃砲所持許可を取得する
銃を所持するには、所轄の警察署で猟銃等講習会(初心者講習)を受講した後、教習射撃と実技試験を経て銃を購入し、公安委員会に所持許可を申請する必要があります。
この所持許可は「1銃1許可制」で、銃器1丁ごとに申請が必要です。そのため、複数の銃を所持する場合は、個別に申請手続きを行わなければなりません。
また、所持許可を受けた銃砲は、毎年1回警察署での検査が義務付けられています。さらに、自宅での銃砲の保管には、専用の「ガンロッカー」が必要で、実包を保管するための「装弾ロッカー」も別途用意する必要があります。
狩猟に必要な道具を揃える
狩猟をする際には、銃や罠などの猟具が必要ですが、狩猟免許の種類によって使用できる遊具が異なります。
猟具は、鳥獣保護管理法や銃砲刀剣類所持等取締法によって所持方法や保管方法が定められています。猟具を取り扱う際には、法令を正しく理解し、使用する猟具に応じた手続きを確実に行いましょう。
狩猟者登録を行う
狩猟免許を取得し猟具を所持していても、それだけでは狩猟を行うことはできません。狩猟をするには、出猟を希望する都道府県ごとに「狩猟者登録」を行い、狩猟税を納める必要があります(狩猟免許未取得者は登録不可)。
さらに、狩猟中の事故に備え、3,000万円以上の共済または損害賠償保険に加入するか、それと同等の賠償能力を証明することが求められます。狩猟者登録を完了すると、「狩猟者登録証」「狩猟者記章」「鳥獣保護区等位置図(ハンターマップ)」が配布されます。
狩猟者登録に必要な書類は以下の通りです。
- ・狩猟者登録申請書
- ・狩猟免状(免許)
- ・損害賠償能力(3,000万円以上の保障が可能であること)を証明するもの
- ・写真 2枚
- ・登録手数料・狩猟税
狩猟者登録は、適切な狩猟を行うために必要な手続きなので、申請先の都道府県担当部局に確認しながら正しく行いましょう。
狩猟で得られる収入は様々!副業から始めるのがおすすめ
狩猟での収入源にはいくつか種類がありますが、得られる収入は活動内容や経験によって変動します。初心者の方がいきなり狩猟だけで生活するのは難しいため、まずは副業として挑戦することをおすすめします。
狩猟の始め方について細かく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。