クリハラリスは台湾をはじめとするアジア地域に広く分布しているリスの仲間で、日本では近年、多くの地域でその存在が問題視されています。その背景には、ペット用として輸入された個体が逃亡、あるいは意図的に放逐されたことが大きな要因として挙げられます。
野外に定着したクリハラリスは、在来種との競合や農作物への食害など、さまざまな被害を引き起こしていることが知られています。体が比較的小柄ですが繁殖力が高いため、対策を怠ると短期間で個体数が大きく増える可能性があります。
本記事では、クリハラリスの基本情報からもたらす被害の実態、さらに外来生物法に基づく規制や防除策に至るまで、幅広く解説していきます。被害を未然に防ぐためのポイントも併せてご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
クリハラリスの基本情報

まずはクリハラリスがどのような生き物なのか、その特徴を押さえましょう。
クリハラリスは哺乳綱齧歯目リス科ハイガシラリス属に分類され、台湾やインドシナ半島、マレー半島などの地域を原産地としています。体長は平均20~26cm前後、尾の長さは17~20cmほどで、体重は300~440g程度とされています。もともとは常緑広葉樹林を主な生息地としていましたが、市街地や公園など人間の生活圏にも十分に適応する力を持つのが特徴です。
繁殖は年間を通して行われる場合があり、一度に1~3匹ほどの子を産みます。食性は主に植物の種子や果実、花、葉などを中心とした雑食性ですが、昆虫や鳥の卵など動物性のものを食べることも確認されています。丈夫な歯を活かしてさまざまな硬い実を破壊し、中身の種子を食べることが得意です。
こうした繁殖力や柔軟な食性によって、地域によっては在来生物との競争を激化させたり、人間の生活環境に深刻な悪影響を与えたりすることが指摘されています。日本国内では神奈川県や静岡県、九州の一部などを中心に確認されており、近年ではさらに分布が拡大していると考えられています。
分類・原産地
クリハラリスはネズミ目(齧歯目)に属し、リス科の一種です。東アジアや東南アジア各地で自然分布が確認されており、日本国内には外来生物として侵入しました。原産地では森の樹上生活をすることが多いですが、人との接触が多い地域でも適応力を発揮しています。
このような広い分布域から、色合いや体の大きさに地理的な変異が見られることがあります。一般的には灰褐色や褐色の体毛をしており、地域ごとに微妙な濃淡の差があるのが特徴です。
原産地の環境と比べると、日本では外敵や厳しい気候条件が少ない地域もあり、生育に有利な場合があります。そのため、初期の侵入個体が定着しやすく、繁殖も容易に進んでしまうのです。
名称の由来と特徴的な外見
一般的にタイワンリスとも呼ばれるクリハラリスは、背中や腹部の色合いから名づけられたという説があります。腹部の毛色がクリーム色がかった明るい色彩を帯びる個体も多く、日本語名称の「クリハラリス」にはこうした毛色が関係していると考えられています。
外見上の最大の特徴は、しっかりとした長い尾と、力強い前歯、そして状況に応じて自在に回転できる手足です。樹上を素早く移動するために、前足と後ろ足を器用に使い分け、高いところから飛び移ることも得意とします。
巣は樹のうろや繁った枝の間に作り、柔らかい植物繊維などを集めてドーム状の塊を形成することがあります。こうした習性が、人の住居や建物の隙間に侵入するリスクともつながり、被害へと発展する原因の一つとなっています。
クリハラリスがもたらす被害
クリハラリスの侵入により生じるさまざまな被害について見ていきます。
クリハラリスは対象を問わず多様なものを食べるゆえに、在来生態系だけでなく、農業や林業にも多大な影響を及ぼすのが問題です。さらに樹皮剥ぎや建物への侵入、騒音といった被害も報告されています。被害が繰り返されると生態系全体の均衡が崩れたり、人間生活に直接的な経済的ダメージを与えたりすることに繋がるのです。
特に日本国内では果樹園や林業地帯などを中心に、農林業被害の深刻化が指摘されており、一部の地域では自治体や研究機関が実態調査への取り組みを強めています。初期段階で適切な管理や対策を行わなければ、被害が長期化・拡大するリスクが高まります。
また、クリハラリスが人家の屋根裏や床下などに入り込み、巣を作るケースも珍しくありません。糞尿汚染だけでなく、通信ケーブルや電線をかじられることで家財設備が故障するなど、修理費用が大きく膨らむ事態にも繋がりかねません。
生態系への影響
クリハラリスは樹上生活を中心に活動しながら、森林内の種子や果実、昆虫など幅広い餌を利用します。その結果、在来のリス類や鳥類と餌を奪い合うだけでなく、鳥の巣を襲って卵やヒナを捕食する可能性もあります。
こうした捕食や競合によって、生態系のバランスが崩れ、在来種の生息数の減少や局所的な絶滅を招く危険性が指摘されています。もともと日本にはさまざまなリス科の在来種が生息していますが、彼らの生存を脅かす要因にもなり得るのです。
さらに、クリハラリスが森林内で広く移動することで、外来植物の種子を拡散する媒介となる可能性も否定できません。これも生態系を大きく変化させる要因になるため、注意が必要です。
農林業への被害
クリハラリスは果実や木の実を主な食物源とするため、果樹園や農地に被害が集中しやすいといわれています。特に収穫期が近づいた果実に対して集中的に食害を行い、生産者にとって大きな痛手となります。
樹皮剥ぎの被害も深刻で、木の表皮をかじり取ってしまうため、その木が枯死する恐れがあります。林業地域では貴重な樹種や若木が被害を受けると、経済的損失だけでなく森林全体の健全な成長に支障をきたします。
こうした農林業被害は、地域経済や生態環境に長期的な影響を残す可能性があります。一度定着したクリハラリスを完全に排除するのは難しく、根気強い防除策が求められます。
生活環境への影響
クリハラリスは人家周辺や公園など、人間の生活圏でも大胆に活動するケースがあり、住宅の軒下や天井裏を巣として利用することがあります。そこでは騒音や糞尿汚染による悪臭、衛生面の問題を引き起こすことが懸念されます。
また、建物内部の木材をかじったり、保温材を散乱させたりして修繕費がかさむ原因となることも知られています。場合によっては電気配線や通信ケーブルをかじってショートや断線を起こし、住民の日常生活に重大な支障を来すこともあるのです。
被害を把握していないうちに数が増加し、より深刻なトラブルを招く前に早期の対策や専門家への相談が必要となります。地域住民同士の情報共有も、生活環境被害の拡大を防ぐうえで重要なポイントです。
日本での生息範囲と拡大状況

国内におけるクリハラリスの生息地域と拡大の動向を知り、対策に活かしましょう。
クリハラリスはもともと本州各地や九州地方などで確認されてきましたが、その生息範囲は徐々に広がりつつあると報告されています。動物園やペットとして持ち込まれた個体が脱走して繁殖したケースが多く、最近では分布拡大速度が加速しているとの見解もあります。
生態系や農林業への被害が問題視される中、各自治体では実態把握と捕獲のための調査が進められています。しかし、個体数が多い地域ではコストや人手の問題もあり、十分な対策が追いついていないのが現状です。
被害が拡大してしまう前に、地道な調査と正確な数の把握を行うことが重要です。誤った情報やうわさに惑わされず、確実な報告や組織的な対策に結びつける姿勢が求められています。
九州を中心とした侵入実態
九州地方の一部地域では、クリハラリスの生息確認と被害報告が相次いでいます。長崎県五島列島や壱岐などの島嶼部だけでなく、熊本県や大分県でも定着が進んでいる事例があります。
侵入経路は明らかになっていない部分も多いですが、動物園やペットショップなどから逸出しておりますます拡散していると考えられています。島という地理的条件があっても、輸送や船舶など人間の活動に伴って拡散する経路が存在する点は見逃せません。
こうした侵入事例から、地域ぐるみでの対策や迅速な情報共有が不可欠であると再認識されています。早期に生息数を把握し、拡散を抑制することが生態系保全と被害軽減に役立つでしょう。
生息情報の収集と調査の重要性
クリハラリスの生態や行動圏は、地域によって微妙に差異があるため、生息地ごとのデータ収集が非常に重要です。どのような場所を好んで巣にするのか、どの季節に繁殖が活発になるのかといった詳細な記録は、効果的な防除策を立案するうえで欠かせません。
調査結果は、捕獲や環境管理に関する自治体や農林関係者の判断材料となります。また、研究者にとっても外来種の棲み分けや生態系への影響を評価する重要なデータとなります。
近年では、住民が見かけた情報や目撃例をネットや自治体に報告するシステムの導入も進んでいます。こういった協力体制が広がれば、対策を練る専門家や行政がより正確にリスの分布や被害の現状を把握できるようになるでしょう。
外来生物法に基づく規制と注意点
特定外来生物に指定されるクリハラリスに関する法的な規制と、その遵守ポイントを確認します。
日本ではクリハラリスは外来生物法に基づき、特定外来生物として指定されています。これにより飼育や輸入、譲渡などの行為が厳しく制限され、違反すると罰則が科せられる場合があります。こうした法規制は、既に被害が深刻化している地域の拡大を防ぎ、在来生物や生態系を保護するための重要な役割を担っています。
また、周囲でクリハラリスを見かけた際や侵入被害が疑われる場合、適切な通報や相談を行うことも求められます。被害を最小限に抑えるために、関係機関と連携して早期解決を目指す姿勢が必要です。
法的な手続きをきちんと理解しておかなければ、善意のつもりで保護したり飼育しようとしたりしても、逆に違法行為になる可能性があります。外来生物法を知ることは、結果的に地域や生態系を守る一助となるのです。
飼育や輸入に関する制限
クリハラリスは特定外来生物に指定されているため、一般家庭での飼育やペットとしての流通は法律で厳しく制限されています。これには輸入だけでなく、譲渡・販売も含まれる点に注意が必要です。
すでに飼育されている個体については登録手続きを行わなければならない場合がありますが、その詳細は自治体や環境省の関連部署が定めるルールを参照するとよいでしょう。無許可の状態で飼育し続けたり逃がしたりすると、違法行為となり罰則の対象になる可能性が高いです。
こうした規制は、外来生物からの被害を未然に防ぎ、生態系を保全するための措置です。法を順守しながら、万が一外来生物を見かけた際は早急に対処を行うことが求められます。
万が一発見した場合の通報先
クリハラリスを発見した場合や、被害が疑われる現場を見つけた場合は、まずは自治体の環境関連部署や農林水産関連部署、あるいは最寄りの保健所に問い合わせるのが一般的です。地域によっては専用の通報窓口や問い合わせフォームが設定されているケースもあります。
また、環境省の地方事務所や自然保護関連の機関に連絡することで、より専門的な対応を得られることがあります。注意点として、個人でむやみに捕獲や移動を行うと、法令に抵触する恐れがあるので、必ず事前に相談してから行動することが望ましいです。
通報する際には、発見場所、目撃日時、個体数など、可能な限り詳細な情報を提供すると、その後の対応がスムーズに進みます。地域の住民同士の協力で正確な情報を集めることが、被害拡大の未然防止につながるのです。
クリハラリスの防除方法
実際に行われている防除方法を知ることで、地域や個人でできる対策を考えましょう。
クリハラリスの被害を軽減するためには、行政や専門家による組織的な防除と、住民一人ひとりの小さな対策の積み重ねが欠かせません。特に捕獲や生息環境の管理は、被害拡大を抑えるうえで重要な施策となります。
防除策は大きく分けて、わな設置などによる直接的な捕獲と、生息環境を管理して侵入を支援しにくい状態を作る方法の2つがあります。前者は迅速に効果が現れやすい反面、捕獲作業に時間と費用がかかります。後者は長期的な効果が期待できますが、継続的な地域レベルの取り組みが必要です。
正しい知識と専門家の助言を得ながら、適切なタイミングや方法で防除を行うことが、クリハラリス被害の深刻化を防ぐための近道といえます。特に初期段階での取り組みが、被害とコストを最小限に抑えるカギとなるでしょう。
わな設置・捕獲の具体例

自治体や研究機関が推奨する方法として、箱わなや捕獲檻の設置があります。捕獲場所に果実やナッツなどクリハラリスが好む餌を仕掛けて誘引し、安全に捕まえるのが一般的です。
捕獲にあたっては、地域のルールや法令を十分に確認する必要があります。特定外来生物であるクリハラリスを捕獲した場合、その後の処分方法や取り扱いも法律で決められており、個人判断で野外に再放逐することは厳禁です。
また、捕獲後に逃げられないように捕獲器具を定期的に点検し、わなに入った個体が放置されないよう細心の注意を払うことも大切なポイントです。人道的な観点からも適切な捕獲手順を守ることが求められます。
地域行政による取り組み事例
一部の地域では、自治体が中心となって住民と協力し、定期的な捕獲活動を実施しています。捕獲用のわなの貸し出しや、捕まえた後の引き取り窓口の整備など、住民が簡単に参加しやすい体制を作ることで成果を上げている事例もあります。
また、学校や地域コミュニティでクリハラリスの生態や被害について学ぶ機会を設け、住民主導で監視を行う取り組みも行われています。こうした啓発活動によって外来生物への関心を高め、早期発見と通報につなげることが期待されています。
各自治体の取り組みは地域の実情によってさまざまですが、自治体間で情報共有をすることで効果的な手法を学び合い、より効率的な防除施策に取り組む動きも拡大しつつあります。
個人でできる対策のポイント
まず、住まいの周囲にあるクリハラリスが好みそうな果実や種子を放置しないことが重要です。収穫期の果樹や家庭菜園などはこまめに管理し、腐った果実が地面に落ちたままにならないようにしましょう。
また、屋根裏や床下など隙間がある場所を点検し、侵入経路を塞ぐのも効果的です。小さな隙間でも入り込む可能性があるため、金網やパテなどで徹底的に補修することが求められます。
もしクリハラリスを目撃した場合は、自治体や専門機関に相談し、正しい手順で対処を行うようにしましょう。誤った方法で対処すると、逆に被害を拡大させたり、法を犯してしまうリスクもあるので注意が必要です。
まとめ:クリハラリス被害を防ぐために
クリハラリスの被害を抑えるために知っておきたいポイントをおさらいします。
クリハラリスは繁殖力と適応力が高く、在来種や農林業、さらには人々の生活環境に対して深刻な被害をもたらす外来生物です。日本各地で生息範囲が広がりつつあり、問題が顕在化している地域も少なくありません。
外来生物法による規制を正しく理解し、発見時には自治体や専門家に通報することが、被害拡大を防ぐ第一歩です。早期に状況を把握し、効果的な防除策に取り組めば、長期的な影響を最小限に抑えることも可能となります。
今後の対策には地域コミュニティの連携が欠かせません。日頃から正確な情報を共有し合い、防除の知識を学ぶ機会を大切にすることで、一人ひとりがクリハラリス被害の抑制に貢献できるでしょう。
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